伊予路
11月29日(土)うす曇り時々雨
家を出てから1週間が経過したが、体調もまあまあで神仏の加護を感じる。足の方は、だましだましではあるが、何とか動いている。
朝、ホテルに荷物を預け、JR線で琴平駅まで行き、念願の金毘羅宮参拝を果たした(行き特急510円、帰り鈍行200円)。駅から神社までの所要時間は、長い階段も含め、往復で2時間ほどだったが、海事関係の仕事に従事しながら還暦過ぎになりやっと参詣でき、ほっとした。モミジが実に美しく、参道では高級カメラを構えた中高年を大勢見かけた。
宿に預けた荷物を受け取り、善通寺から多度津駅まで再び電車に乗り(200円)、七十七番道隆寺(ドウリュウジ)に参拝。また雨が降ってきたが、雨合羽は着用しないでも済む程度で、海が近いらしくカモメが飛んでいる。さらに多度津から丸亀に移動(200円)。丸亀には札所はないが、その昔、母方の祖父がここの連隊にいたと聞いており、同じ陸軍軍人だった父親から「できればあたりの様子を見てこい」と言いつかっていたので、駅前からタクシーに乗った。雨はいつのまにか上がっている。運転手は40歳代と思われ、丸亀連隊跡に連れて行ってほしいといってもピンとこない様子である。丸亀城の近所だろうと察しをつけ、あたりをしばらく探してもらったところ、城を見上げるオフィス街の片隅に“護国神社”を発見し、あたりの石碑などを携帯写真で撮影した。立ち寄る人とてなく、今さらながら戦前は遠い昔となり果てた感を強くした。丸亀といえば、幼少時に読んだ講談本に登場する“田宮坊太郎”の仇打ちで知られたところだが、世代の異なる運転手は「聞いたことがない」と、キョトンとしていた。立川文庫そのものが死語となっているので致し方ない。
一応の任務は果たしたので、同じタクシーで七十八番郷照寺(ゴウショウジ)まで乗せてもらい(2,000円)、市街地の外れのやや高台にある本堂で参拝を済ませ、JR宇多津駅まで20分ほどかけて歩いた。この駅は、岡山方面からくる鉄道と予讃線が合流するところのようで、駅前には高層のマンションが立ち並び、瀬戸大橋開通後、急速に発展したことをうかがわせていた。
宇多津から八十場までJRで移動し(210円)、駅から歩いて10分ほどの七十九番天皇寺(テンノウジ)に参拝。この寺は、名前の示す通り、四国に配流された崇徳天皇崩御の場所にあたる。境内には白峰神社が同居し、山門の代わりに赤い鳥居が建っている。本堂での読経後、神社にもお参りしたが、他にはあえて参拝する遍路もなさそうで、不遇の天皇の亡くなられたところという先入観も加わり、わびしさが漂う。八十場から国分まで再び電車に乗り(210円)、八十番国分寺(コクブンジ)に向かった。にわか雨に濡れながら、境内にかつての堂宇の礎石が散在する、四国に四カ所ある最後の国分寺で参拝を済ませた。私の遍路行もいよいよ終盤に差し掛かった。寺から歩いて5分の遍路宿Hに投宿(二食付き6,500円)。天気がめまぐるしく変わる中で電車に乗ってばかりの一日だったが、腕時計は21,000歩14kmと、存外歩いたことを示していた。


